読書記:『星夜航行』飯嶋和一(文芸春秋)

甚五郎を中心とする群像劇であり、通底するのは支配者とそれに取り付く者たちの理不尽な/利己的な欲望に基づく行動と保身に苛まれながら、才能頭脳を使って果敢にそれに抵抗しもしくはまったく無力に命や生活を奪われる人民や支配者側の者たちの姿である。

それはわかるけれども、まるで軍記・戦記のように時系列に戦況を微に入り細を穿った記述を延々と読まされるのは正直つらかった。その中に確かに人間ドラマが織り込まれているのだけれども、そしてその必然的背景として記述したいと推測するけれども、却ってそれにより登場人物の考え方を読者が感じることを妨げてはいないか。

「~であろうはずもなかった」のフレーズの多用も気になった。こんなに文章投げたように書く人だったか。


遡って始祖鳥記、雷電本紀を再読して確かめたくなった。